8月8日・夜

 

 ホテルへのチェックインを済ませた夫婦が天気予報を見ていた。一流ホテルより若干だがランクが下がるものの、二人が一泊するには十分なサービス付きの部屋だ。

「向こうの天気は良さそうだけな」

「ええ。でもこの季節に帰るのは、いったい何年ぶりだろうね」

「そうだな…。20年ぶりぐらいかな?」

「でもこんなことでも無い限り、こうして向こうで、ゆっくりできないでしょうね」

 毎日が仕事続きのこの夫婦にとって、久々のバカンスを取ることができた。お盆に当たるこの時期ではあるが、彼らにはそのようなものはない。仕事上の最大のパートナーである妻と結婚して早20余年。このように二人でゆっくりしていられる時間の方が少なかった。

 

 しばらくしてお互いに就寝の準備を進める中、

「向こうに行ったら、俺達も出会った所にいってみようか?」

「フフッ、いいかもね。でもまずやることがあるでしょ。それからね」

「そうだな…」

 

 二人は出会った頃を思い出しながら、深い眠りに就いた。

 

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