倉庫前
二人が倉庫前に戻り一時間半近く経って、ようやく荷物が届いた。
「本当に、ありがとうございました」
荷物をライトバンに載せる頃には11時半を回っていた。海風があるものの、蒸し暑い南風が容赦なく体力と体内の水分を奪っていく。
「おーい、水だ、水」
車のエンジンを入れ、社内から持ってきたクーラーボックスに入れていた飲み物を全員に渡す。飲み物の容器から伝わる冷たさと、機械的に冷やされた冷風が、体に過剰反応する。
「川口、気を付けて運転しろよ」
車を発進させた後、課長はコンビニの袋の中から、おにぎりを取り出した。
「お前の分はちゃんと残しておくから、安心して運転しろよ。ほらっ、今のうちに食いな」
まだ昼には早いが、これから先のことを考え、課長が昼食を勧めた。レインボーブリッジを渡りながら、運転している川口を除く3人が、軽く腹ごしらえをした。
相手先工場前
途中、川口に昼食を取らせるため、課長が運転を代わった。その川口がおにぎりを食べ終わる頃、荷物の届け先にたどり着いた。
「ちょっと、トイレ」
「ああ、トイレは右に曲がってすぐの所だから」
「ありがとう」
「課長…」
「……」
「………」
彼がトイレから帰ってくるのを待って、4人は荷物の搬入を始めた。
「これで、最後です」
「はい、ご苦労さん」
車内
4人の連携もあってか、比較的早い段階で仕事を終えることが出来た。
「なんとか終わったな」
「この時間なら、交通規制前に帰れますね」
「そうだな」
運転する課長と市川の会話が続く中、車は第一京浜を北上し、
「あっ、これ箱根駅伝のコースですか?」
「ご名答」
せっかくの休日を返上して来てくれた社員へのサービスなのか、それとも出来るだけ渋滞を回避したいのか。国道15号線を回避し、日比谷通りへと向かった。
(ここを右に曲がればいいのかな?)
道路標識を見て、そう思った日比谷の交差点。しかし、車は右折レーンに入らず、直進した。
「10区はここを右折して、銀座・日本橋を抜けてゴールへ向かうコースに、最近変わったんだ」
淡々と説明を続ける課長であったが、彼は異変に気づいた。
「あれ?」
「どうした?」
「今のところ、右折するんじゃないんですか?」
「まぁな。まだ時間に余裕があるしな」
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