二人はゆっくり砂浜を歩きながら、約束の場所へと近づいていた。しかし、それを目前にしたとき、

 (!)(!?)

 灯台の照らし出す光と違う光が、二人の間に割って入った。

 「おいっ!」

 灯台の管理人が階段を下るのを止めて近づいてくる二人に声をかける。その声は、警戒を感じさせるには十分な感情が込められていた。

 

 しかし、それ以降の言葉が発せられない。お互いの譲れない気持ちが膠着状態を生み出していたが、先に動いたのは管理人の方だった。

 「手摺、低いから落ちるなよ」

 そう言って階段を降りていった。呆気にとられた二人ではあったが、

「見逃してくれたんだよ、きっと」

 そう言って優は、再び灯台に向け歩き始めた。彼も、それに続いた。

 

 

「あっ…」

 優が思わず声を上げる。灯台の上に上る階段の入り口に鍵がかかってなかったからだ。

 「後であの人に、お礼を言っておかないとね」

 彼はそう言って、階段を上り始めた。彼にとっては、優との最後の夜以来。優にとっては、彼が幻となったあの始業式の日以来、お互い10年ぶりに、灯台を登り始めた。

 

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